対人地雷除去作業への協力 |
ニカラグアは、80年代に内戦を経験しました。左翼のサンディニスタ政府軍とこれに反対する「コントラス」軍(以下コントラという)が戦ったもので、政府軍はコントラの進入に備えてホンジュラスの国境沿いや激戦地のヒノテガからボアコにかけての周辺に対人地雷を敷設しました。また、敷設場所も軍の施設、橋梁周辺、送電線鉄塔周辺等に多くありました。一方、コントラも地雷を敷設したといわれています。政府軍の敷設した対人地雷は一応その数と敷設場所が押さえられているが、ゲリラ戦を行ったコントラの分に関しては統一的情報はありません。90年代の始めまでにこうして敷設された対人地雷の数は14万7000発を超えるといわれています。事態を複雑にしているのは、当地はハリケーンに襲われることが多く、橋梁周辺に敷設された地雷は、土砂崩れや水害によってその位置が変わってしまうことです。特に1998年のハリケーン・ミッチによる被害は大きく位置のわからなくなった地雷は数多いといわれています。これに加えてニカラグアには13万3435発の貯蔵地雷がありました。
ニカラグアで地雷除去作業が始まったのは1989年からです。しかし、本格的に始まったのは93年からで米州機構(OAS)の協力を得て進展しました。98年には「国家地雷除去委員会」が大統領府に設置され国軍をはじめ関連省庁、国際機関、NGO等を組織化しました。同委員会の下、(1)地雷除去活動、(2)犠牲者援助、(3)事故を防ぐ教育・広報活動を行っています。これらの活動に現在でも協力している支援国・国際機関は、日本やデンマーク、AS、UNICEF、UNDP等です。
2009年末までの結果をみると、先ず貯蔵対人地雷に関しては13万3435発全てが2002年までに廃棄されました。埋蔵対人地雷については、17万8411発が処理され、残りは1338発が残るだけとなっています。つまり全体の約99%以上が処理されたことになり、2010年中の「地雷ゼロ宣言」が期待されています。ちなみに、地雷による犠牲者は1256人といわれ、そのうち91名が死亡しました。
なお、2001年には「オタワ条約」国の年次総会がマナグアにおいて開かれました。 |
2.日本の協力 |
日本の地雷除去に対する協力は、90年代においてOASを通した中米諸国への援助に遡ります(「中米地雷除去支援計画」PADCA)。ニカラグアに対しての直接的協力は、2001年に2台の地雷除去機提供と除去作業への協力として「見返り資金」により2548万コルドバ(約2億2500万円)を行ったのが最初です。2回目は引き渡した2台の地雷除去機の部品取り替え等メンテナンス資金を2002年に提供しました。これも見返り資金を使用して1209万コルドバ(約1億300万円)でした。この国の内戦という特殊事情、対人地雷の非人道性さらに人間の安全保障の観点から、日本大使館はこの案件への引き続きの協力を約し、3回目の協力を2004年に行いました。それは、3台目の地雷除去機を提供するもので前2台と違い、最新式の除去機を導入することになりました。地雷除去機は先端の回転するローターが地雷に触れると爆発する仕組みになっていますが、この除去機はローターに加え金属を探知する金属探知器と金属を回収する強力磁石が付いている最新式のものです。同除去機は2005年末にニカラグアに到着し、国軍への訓練が行われた後、2006年2月10日に正式に同国に引き渡されました。この機械と訓練を含めた費用は1760万コルドバ(約1億1000万円)であり、これも見返り資金で行われました。この最新式の機種(山梨日立建機製BM307-VGDM23)が海外に出るのはニカラグアが初めてであり、この性能がどの程度なのか専門家も期待しているといわれています。
2004年には国軍からの強い要請もあり地雷原へのアクセス道路建設に大使館は貢献しました。先ず地雷除去機を敷設地雷のある地域に運ぶためにある程度の道幅のある道路が必要なこと、また、こうした農道は、地雷が除去されてしまえば農作物の移動や村民の移動用として地域振興に大いに役立つこと等の理由により大使館は、北部地帯合計約69キロの農道建設を承認しました(2KRの見返り資金を使用、総額1830万コルドバ、約1億1895万円)。2006年3月現在これらの農道は、46キロが完成しています。また、子供達への地雷注意キャンペーンとして日本政府がUNICEF経由で援助した15万ドルも当地で有効に使用され、ビデオ(「警告の声」Voces de alerta)やポスターの作成および巡回教育が行われました。
2006年には4回目の協力として、見返り資金を用いて合計3台の地雷除去機のメンテナンスと除去作業にかかる費用1500万コルドバ(約7500万円)が供与されました。その後も2008年に同じく見返り資金から1789万コルドバ(約9000万円)、2009年には2000万コルドバ(約1億円)が供与されています。
大使館としては、これらの日本の援助が当国の地雷除去に役立ってきたと確信しており、今後も必要があれば惜しまず協力を継続していきたいと考えています。 |
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